農地の転用計画は周囲への影響を最小限に

農地転用を進める際には、転用予定の農地に加えて、周辺農地への影響まで見据えた計画を立てることが重要です。
排水や土砂流出、農地の分断、日照・通風などによって地域の営農環境に支障を及ぼすおそれがある場合、許可審査に影響する可能性があるからです。
ここでは、農地法の基本概要をお伝えしたうえで、転用計画で考慮するべきポイントを解説します。

農地法の基本概要

農地法は、国内の農業生産の基盤を支えるために、農地を適切に保全する目的で制定された法律です。
とくに日本には山林が多く、農地として利用できる土地は限られているからこそ、将来まで守られるべき資源といえます。
そのため、農地転用や権利の取得に関して、農地法に基づき一定の規制を設けることで、無秩序な利用を防いでいます。
また、農地法の目的は単に農地を残すことだけではありません。
周辺環境との調和に配慮し、農地を効率的に利用できる耕作者へ集積する仕組みを整え、国内における農業生産量の増大につなげることも重視されています。
農地は、食料の安定供給を確保する上で不可欠である点を踏まえると、周辺の農地や地域農業への影響まで踏まえた農地転用を検討することが求められます。
具体的な規制内容は「農地はとってもデリケート?」からもご確認いただけます。

農地法の違反リスク

無許可で農地の売買・転用を行うと、農地法違反として、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(法人は1億円以下の罰金)に処される可能性があります。
もっとも、違反が疑われても、直ちに罰則が科せられるとは限らず、調査や報告、是非指導など段階的な措置が施されることもあるので、迅速に対応することが大切です。

農地転用で周辺農地に配慮するべきポイント

農地転用の許可審査では、転用予定地だけでなく、隣接農地や周辺農地への影響も重要な確認事項に含まれます。
ここでは、農地転用で意識しておきたい周辺農地への配慮ポイントを3つ解説します。

営農環境を損なわないこと

農地転用をする際、転用予定地だけでなく隣接する農地の営農環境に悪影響を与えないことが重要です。
農地法第4条・5条に基づく許可審査では、農地を農地以外に利用することや権利移動を伴う転用に規制を設けており、周辺農地への影響が重要な審査項目となります。
排水不良、土砂の流出、作業動線の阻害などが想定される場合、転用許可の審査で不利に働く可能性があるので注意が必要です。

利用状況や一体性を損なわないこと

農地は一筆で独立しているとは限らず、周辺農地との境目が曖昧で一体的に利用されていることも少なくありません。
たとえ、所有者であっても部分的に農地転用をすることで周辺農地の連続性を損ね、農業生産の効率を下げるおそれがある計画は認められにくい傾向にあります。

土地改良区の農業基盤への支障をきたさないこと

近隣に土地改良区に関係する農地がある場合、見た目の変化だけなく、用水路や排水施設など農業基盤への影響を考慮しなければなりません。
土地改良法第2条では、農業用用排水施設、農業用道路、そのほか農地の保全または利用で必要な施設に関する新設・管理・廃止・変更を土地改良事業として位置付けられています。
そのため、該当する場合、土地改良区の施設や営農環境に悪影響を及ぼさないよう、確認と調査を行うことが重要です。

農地の転用計画で押さえるべき考慮事項

農地転用では、具体的な転用計画を基に農業委員会と擦り合わせながら、許可取得に向けた準備を進めることになります。
ここでは、転用計画で押さえておきたい考慮事項を3つ解説します。

雨水・排水の処理や土砂の流出防止を計画に含める

農地の転用計画で、最も重要な事項の一つが雨水・排水の処理や土砂の流出防止です。
農地法第4条・5条でも、周辺農地の営農や農業用用排水施設の機能への影響が、許可審査で確認されることが明記されています。
工事期間中を含めて、どのように排水を処理して土砂流出を防ぐのか、根拠のある転用計画を立てることが不可欠です。

農地の分断・蚕食を招かない配置にする

所有していている農地がほかの農地と一体化している場合、部分的に転用することで農地の分断・蚕食を招かないよう、配置を工夫する必要があります。
転用したことで周辺農地の作業効率や生産性が低下するとなれば、許可審査で支障事由になり得るため、転用範囲の縮小や作業動線の確保など対策が求められます。

日照・通風への影響を配慮する

転用後に建物の建築や工作物の設置を検討している場合、周辺農地への日照や通風が遮られることがないように考慮しなければなりません。
たとえば、高層ビルを建てることで耕作物の生育環境を悪化させるような転用計画を立てていると、許可審査で不利に働く可能性があります。
工事を始める前の設計段階から日照や通風への影響を想定して、周辺地域の農業生産と調和するように整えることが大切です。

まとめ

農地の転用計画を立てる際、転用予定地だけでなく、隣接農地や土地改良区を含む周辺農地への影響を考慮する必要があります。
排水処理や土砂流出・農地分断の防止、日照・通風への配慮などを具体的に転用計画で整理し、農業委員会と内容を擦り合わせる準備が欠かせません。
転用計画や許可審査の進め方で不安や疑問があれば、専門家である行政書士に相談しながら進めることをおすすめします。