転用したい農地に賃借権が付いているときはどうしたらいい?

「地目が農地になっている土地を、宅地や駐車場などの用途に転用したい」というときには、農地転用のための許可申請や届出が必要です。
しかも、もしその農地が他人への貸し借り(賃貸借)に使われていると、その手続きにはさらにひと手間がかかってしまいます。

賃借権の付いた農地を転用する際には何をしなければならないか、知っておきたいポイントをここでご紹介いたします。

賃貸借契約を終わらせるには行政庁の許可が必要

農地転用の申請対象となる農地に第三者の賃借権が付いているときは、転用の申請に先立ってその賃貸借契約を終了させなければなりません。
しかし、農地法では農地の借主の権利を手厚く保護しており、農地の賃貸借契約の解約には都道府県知事の許可が必要とされています(農地法第18条第1項)。たとえ貸主と借主の双方が契約終了に合意していても、行政庁の許可がない賃貸借契約の解約は無効とされてしまうのです(!)。

※一部例外を除く。上記条項但し書きを参照のこと。

円満な契約解約を証する書類が必要、だけど

行政庁から農地の賃貸借契約の解約許可を得るためには、農地の貸主と借主が円満に契約を終了させたことを証する書類が必要です。

貸主と借主が常に連絡を取り合える状況にあれば特に問題はありませんが、例えば「借主の名義人が亡くなっていて、賃借権に相続が発生している」などの場合は、話は複雑になります。
亡くなった借主の相続人には賃借権の持分が相続されているため、相続人全員から賃貸借契約の解約の同意を得なければならなくなる、といった事態が発生すしてしまうのです。

「口約束の貸し借り」にも要注意

また、通常の不動産取引であれば、登記簿をチェックしてその土地に誰がどのような権利を持っているかが調べられます。

しかし、農地の貸し借りは登記まで行われることの方が稀で、登記簿上で借人が誰なのかを確認するのは困難です。
例えば、代々引き継いできた農地に、ご先祖様の誰かが知人に「この農地をいくらで貸すから使っていいよ」と登記手続きなしに口約束をしていたら……。

そこで、農地の賃貸借を確認するためには、別のアプローチが必要になります。

農地台帳をチェック

転用を希望する農地が賃貸借されているか確認するときは「農地台帳」を調べましょう。

これは農業委員会が管理している農地の情報を記録した帳簿で、農地の所在地・面積・所有者・耕作者(借主)など、賃貸借契約に関わる記録もここに残されています。

農地台帳は法律に基づいて整備が義務付けられていて、各市町村の農業委員会で管理されています。

※明治から昭和初期にかけて行われていた賃貸借は「戦前小作」と呼ばれ、現在もその賃借権が残っているケースがある。こうした古い契約も見逃さないように注意。

なお、農地台帳の内容をチェックすることで賃貸借契約の有無は確認できますが、借主の電話番号やメールアドレスまでは記録されていません。
契約終了に向けて話し合うには、住所などの情報から、連絡を取り合えるように別途対応していかなくてはなりません。

農地ナビも活用すると良い

農林水産省が運営する「eMAFF農地ナビ」も利用できます。

https://map.maff.go.jp/FarmInformation/Index

このWebサイトでは、全国の農地について地図上で位置を確認したり基本的な情報を閲覧したりできます。
自宅のパソコンやスマホからでも手軽にアクセスできますので、まずはこちらで大まかな情報を確認するのも良いでしょう。

ただし、個人情報保護の観点から、同サイト上で所有者や借主の氏名・連絡先といった個人情報までは表示されません。
詳細情報が必要な場合は、市町村の農業委員会の窓口で農地台帳を直接閲覧する必要があります。

借主とはどうやって連絡を取る?

農地台帳や農地ナビで賃貸借契約の存在が確認できても、借主と直接連絡を取るための情報を得ることはできません。

古い契約だと特に厄介で、借主が世代交代をしていて契約当時の借主の子どもや孫が現在の契約当事者になっている可能性もあります。

そのほか、借主が引っ越していて住所が変わっていたり、結婚などで姓が変わっていたりすることもあり、当事者をなかなか見つけられないケースもあります。

そこで、当事者やその親族、近隣の農家、地元の農業委員会などに問い合わせてみましょう。地道な作業になりますが、「今誰が借主で、どうすればその人と連絡が取れるのか」を根気強く調べていくことが大切です。

転用で困ったときは行政書士にご相談ください

農地の賃貸借契約には、一般の土地にはない特別なルールが適用されるということもあり対応に苦労するかと思います。

書類の準備や関係者との調整が必要ですし、その前段階で「借主と連絡がつかない!」と悩むこともあるかもしれません。

もし、農地の賃貸借契約の解約手続きや転用でお困りであれば、行政書士にご相談ください。
賃借権の有無や借主との連絡手段を調べたり、必要書類を作成したり、転用に必要な作業を広くサポートすることができます。